人の気持ちを考えて行動しますは当たり前
❖人の気持ちを考えることは大事だけど...
自己PRで「私は人の気持ちを考えて行動することが出来ます」と言ってくる学生がいます。女子学生に多いのですが、この言葉を聞いた時、私はそこにいる学生すべてに質問します。「人の気持ちを考えて行動する人、手をあげて...」そうするとほとんどの学生が手をあげます。そうなんです。人の気持ちを考えて行動する行為は、ほとんどの学生が行っているのです。そのため「私は人の気持ちを考えて行動することが出来ます」というのを自己PRで使うのは得策ではありません。
でも、仕事上で人の気持ちを考えて行動することは重要です。場面場面で、お客様や上司・同僚・部下・取引先などの気持ちを考えた上で、その人に対し利益をもたらす行為をすることが仕事だからです。そのように仕事を続けていると「仕事で貢献できる人」という評価を受けます。人の気持ちを考えた先にある「他者に対して利益をもたらす行為」というベクトルで考えていくとエピソードが出てくるのではないでしょうか。
❖他者に対して利益をもたらす行為とは??
仕事の経験のない皆さんにとっては「他者に対して利益をもたらす行為」が「仕事で貢献できる人」であるということが具体的にどういうことなのかなかなか結びつかないと思います。ちょっと次の例で考えてください。新人として仕事をする中で先輩から「○○さん、この資料のコピーをとっておいて。」と言われたとします。これに対して皆さんならどのように対応するでしょうか。 学生にこの質問をするとほとんどの学生が「資料のコピーをとります。」と答えます。もう少し詳しく話すように促すと「資料を貰って、コピー機の前に行って、コピーのボタンを押して、コピーをとります。」というように答えてくれる感じです。 筆者も新人の頃このように言われたとき、「わかりました」と元気良く答え、コピーを1部とって先輩に渡して「お前は仕事をしていない、作業をしている」と怒られたことがあります。 何を言っているか解らなかったので「どういうことですか」と尋ねると「お前は1頼まれると1で返してくる。1頼まれたときに1.2さらには1.5と大きくして返すのが仕事だ」と言われました。要するに仕事を頼まれたらそこに付加価値を付けて返せということのようでしたが、コピー1部にどうやって付加価値をつけるのかがさっぱり解りませんでした。
さらに聞くと「コピーを頼んだ書類に少し目を通したか」聞かれました。ぱっと見て月例の報告書だということは分かっていたので「月例報告書だということは分かりましたが」というと「じゃあそれは誰が見てどうファイルされるか知っているか」と聞かれました。そこで少し考えて、課長・部長が見て先輩が個人のファイルに、課長は課のファイルにそれぞれコピーをとって入れて、原本は部長が部のファイルにファイリングすると答えました。先輩は「それを知っているのなら、それぞれの分のコピーをお前がとったほうが効率良いと思わないか」と聞かれはっとしました。また「なぜおまえにコピーを頼んだか分かるか」とも聞かれました。「分からない」と言うと「おまえに報告書の書き方を勉強させるためだ」と言われました。 私は先輩からコピーをとってくれと頼まれて、その言葉通りコピーをとることを自分の仕事と思っていました。しかし、コピーをとることは仕事としては一部分でしかなく、仕事を頼まれたときに、その仕事がどういう意味があるのかを考え、組織全体がどのようにすれば効率良く回るか、他者の仕事の効率を上げるかを推理し、その推理を元に作業することが仕事だと気付きました。まったく、先輩の気持ちを考えずに、先輩の言葉だけで動いていた自分が恥ずかしくなりました。 「○○さん、この資料のコピーとっておいて」と頼まれた場合、まずコピーする資料がどのような目的で使われるかを考え推理します。この推理が人の気持ちを考える行為です。推理した上で「先輩と課長がファイルする分の2部と、勉強のために私の分が欲しいのですが全部で3部コピーしてよろしいですか。」などと確認します。3部コピーをとりクリップで留め、付箋に先輩分・課ファイル分と書いてそれぞれコピーに貼り付けて2部を先輩に渡し1部を自分でファイルします。
❖人の気持ちを考えた後の行動が大切... さて、皆さんはこのように何かをする時、人の気持ちを考えた上で「他者に対して利益をもたらす行為」をしていますか。仕事全体を考え自分が出来ることを行う。これによって他の職員が効率的に動くことが出来て、最終的に顧客の利益になる。このような人が「仕事で貢献できる人」という評価を受け、周りから信頼される人材となっていきます。
仕事全体を見て推理し、自分が出来ることを考え、それを確認し、行動する。社会人として「他者に対して利益をもたらす行為」を行うことってこういうことです。また、企業の中で「人の気持ちを考えて行動する」とはこのようなことと思ってください。また、自己PRで「人の気持ちを考える」ことを言いたいのであれば「他者に対して利益をもたらす行為」をエピソードとして述べ、最初のキャッチとしてはその行為の先にある自分の考え方を出すべきと考えます。
人の気持ちを考えることは大切なことです。是非、その特徴を発揮して欲しいとは思います。でも、ほとんどの人が、人の気持ちを考えるので、その先の自分の考え方の特徴を言語化してください。
(就活ゼミ:就職の教科書理論編より抜粋)